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大地讃頌

 中学の頃、合唱コンクールで歌った「大地讃頌」。
 いい歌だったように思うけれど、冷静に思い返すと、この曲、雰囲気だけで引っ張っている曲ですねぇ。
 雰囲気でいったら「地上の星」にも勝るとも劣らない気がする。
 だけど少なくとも、歌詞に共感なんかできない。あんた一体何が言いたいんだよ、って。
 人の子ら〜、人の子ら〜、って繰りかえされても……。
 あんな壮大なメロディーに載せて、土に感謝せよ〜、って言われても……。
 な〜んて、ツッコミを入れつつネットで検索していたら、こんなの見つけました。
 http://www.enanishi-j.ed.jp/PAGE-DATA/2gyouji/gassho/h13-g.html
 で、これ聴いたら、不覚にもものすごく感動してしまった。
 前奏を聴いただけで、僕の心は中学時代にタイムスリップしていました。
 曲の前半はいろいろなことを思い出しながら、そうそうこんな感じだった、という風に聴いていました。早朝練習を何度もさせられたなぁ。自由曲は「モルダウの流れ」だったっけ。ところでピアノの伴奏をしていた女の子は、自分だけ歌えないで疎外感を感じなかったのだろうか……。
 しかし「静かな〜大地を〜」のところからだんだんボルテージが上がっていきました。もう何年もの間、ずっと感じることのなかった合唱という形式の感動が、一遍に噴き出してきたのです。
 そして一瞬男子が旋律になる「われら〜人の子〜の」のところでは、良く判らないけれど「勇気」という言葉さえ心に浮かんできました。後ろで絡んでくる女子のパート、「恩寵〜の〜ゆたか〜な、ゆたか〜な〜大〜地」も、「あなた、しっかり!」と良妻が励ましているような、そんな優しさに満ち溢れていました。
 さらに畳み掛けるかのごとく、「母なる〜大地を〜」のところでは夜明け前のような静けさ……。今後の盛り上がりを期待させ、その期待にしっかり応えるかのように「たたえよ〜土を〜」と続きます。僕はここで思わず、「そうなんだよ!」と膝を叩いていました。(ちょっとだけ誇張表現)
 そして最後の「たたえよ大地を あ〜」のところでは、ついに昇天……。
 曲が終わった後も、しばらくの間、重く、深い余韻が僕の中から去りませんでした。
 僕はこの文章を、「思ったほど大地讃頌っていい歌じゃないよね」っていうスタンスで書くつもりでした。
 ただ土を褒め殺してるだけの曲……。
 だけど恵那西中学校三年生の歌声を聴いて、やっぱりこの曲、すごいと思った。
 何がすごいって、大地なんて誰もが讃頌したいわけじゃないのに、これだけ人々を感動させるのですから。  

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